目次
実験概要
125Iまたは131Iの選択
ヨウ素化技術の選択
ヨウ素化製品とカタログ番号
実験概要
タンパク質のヨウ素標識は、目的のタンパク質に高い比放射能でトレーサーを加える一般的な方法です。いくつかの方法があり、標識されるアミノ酸や使用される反応条件が異なります。下記の表を使用して、最適な方法を選択してください。
一般的に使用されるのはボルトンハンター試薬を用いた方法です。
ヨウ素の放射性同位体の半減期は比較的短く(125Iで60日、131Iでは8日)、ヨウ素標識されたタンパク質は放射性同位体崩壊による活性の喪失および分解を受けやすくなります。したがって、ヨウ素標識タンパク質は標識後30日以内に使用する必要があります。
125Iまたは131Iの選択
アイソトープ | 推奨用途 | 半減期 | 崩壊方式 | 放出 |
125I | ・オートラジオグラフィー、ガンマカウンティング、シンチレーションカウンティング、ラジオイムノアッセイおよび受容体リガンド結合アッセイでよく使用されます
・SPAに最適です。 |
60.14日 | 電子捕獲 | Ka X線:0.027 MeV(112.5%)
Kb X線:0.031 MeV(25.4%) ガンマ:0.035 MeV(6.5%) |
131I | ・高エネルギーガンマ線は組織イメージングに適しています。 | 8.04日 | ベータ崩壊 | ガンマ:0.080(2.6%)、0.284(6%)、
0.364(81%)、0.637(7.3%)、および0.723(1.8%)Mev X線:0.030(3.9%)MeV |
ヨウ素化技術の選択
標識技術の選択は、タンパク質またはペプチドの標識に利用されるアミノ酸等に依存します。
反応方法 | 説明 |
ボルトン-ハンター試薬(Bolton-Hunter Reagent) | ボルトン – ハンター試薬を用いて、タンパク質のリジン残基の e-アミノ基および N末アミノ基を標識します。チロシン残基を標識したくない場合の選択肢となりますが、125I よりも大きな3-(3-iodo-4-hydroxyphenyl)propanoyl 基(MW 290)が結合しますので、生理活性が変化する可能性があります。
Ref. Bolton, A.E. and Hunter, W.M., Biochem J. 133 529-539 (1973). |
クロラミン-T法(Chloramine-T) | パーキンエルマーの125I標識化合物製造で、最も一般的に用いられている標識法です。
[125I]または[131I]ヨウ化ナトリウムをクロラミンTにより酸化して、活性型の[125I]I+を生じさせます。効率よくチロシン残基に放射性ヨウ素を導入できますが、その酸化力の強さや、反応持続時間が短いことから注意が必要です。 Ref. Hunter, W.M. and Greenwood, F.C., Nature 194 495 (1962). |
アイオドジェン(ヨードゲン)法(IODO-GEN®) | 酸化剤としてクロラミンTの代わりにアイオドジェンを用いる標識法です。脂溶性のアイオドジェンを反応容器にコーティングしたものを使いますので、酸化反応が溶液全体で起きず、穏やかな反応が行えます。
また、クロラミン-Tのように反応停止に還元剤を用いないため、ジスルフィド結合を開裂する可能性が低くなります。 |
ラクトパーオキシダーゼ法 | 過酸化水素存在下で、ラクトパーオキシダーゼによって [125I] ヨウ化ナトリウムが酸化されることを利用する方法です。アイオドジェンと同じく反応が穏やかですが、他の方法と違い反応pHが中性ですので、アルカリ条件化で不安定な物質の標識に向きます。 |
置換法 | 臭素などのハロゲンを導入した前駆体に対し125Iの置換反応を行うものです。 |
ヨウ素化製品とカタログ番号
詳細についてはこちらをご覧ください。(ページ内 “放射性標識タンパク質125I” )